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「忖度」ってどういうこと?なぜ日本でよく使われる?

社会
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 最近、時々ニュースやSNSで「忖度(そんたく)」という言葉を耳にします。以前には森友学園問題で注目された忖度は流行語大賞にも選ばれたことがありました。そして、政治の世界だけでなく、職場や日常会話でも使われるようになったような気がします。ぼんやりと忖度を知っていますが、正確には知らないような気がします。そして、雰囲気として日本の風土に根付いているような気がします。

 このブログでは、この忖度について本来の意味や歴史的背景、日本文化との関係について調べました。以下にそれらの内容について説明します。

本来の意味の「忖度」

 忖度は、人の気持ちを察することで、人の内心を察してうまく取り計らい対処することを意味しています。そして、「忖」も「度」も「はかる」という意味を持ちます。また、古代中国の書物『詩経』にも登場する由緒ある言葉です。そして、日本でも平安時代から使われており、当初は中立的な意味合いでした。

歴史的背景

 日本は古くから稲作を中心とした農耕社会であり、村単位での共同作業が生活の基盤でした。この環境では、目立たず、調和を乱さずに生きることが生存戦略となりました。そして、周囲の気持ちを察して行動することが重要視されました。その結果、「言わなくてもわかる」「察し合う」ことが、社会の安定を保つための文化的装置として機能するようになりました。

 そして、明治以降の近代化では、「個より公」「私より組織」という価値観が強まりました。また、学校教育では規律や集団行動が重視され、「空気を読む力」が社会性として教えられました。加えて、戦後の高度経済成長期には、企業が家族的な組織として機能しました。そして、忖度や察しの力が出世や人間関係の潤滑油として重要視されました。また、日本文化では、遠慮と察しが伝統的な対人規範とされ、相手の曖昧な表現や態度から意図を読み取ることが求められています。

話題になった発端は?

 2017年、森友学園をめぐる政治問題で「忖度」という言葉が一躍注目を集めました。これは、「安倍首相の意向を忖度したのでは?」という報道が相次いだことが要因です。そして、流行語大賞にも選ばれました。この頃から、「忖度=権力者に気を使って動くこと」というようにとらえるようになりました。これにより、やや否定的なニュアンスが広がったようです。

日本社会に根付く「忖度」の文化

 もともと日本では「空気を読む」「和を乱さない」といった価値観が重視されています。そのため、明確な指示がなくても「察して動く」ことが美徳とされる傾向があります。例えば、上司が何も言わなくても「こうしてほしいんだろうな」と感じて行動するがあります。これがまさに「忖度」と言われるものです。

組織構造との関係:「家元モデル」とは?

 明治大学の小西教授によれば、日本の組織は「家元モデル」に近いと言われています。これは、権限が明確に分かれておらず、トップの意向が曖昧なまま伝わる構造です。その結果、部下は「言われていないけど、きっとこうだろう」と忖度し動くことが多くなっています。

 注:家元(いえもと)とは、日本の芸道などを家伝として承継している家系のことです。また、その家系の当主個人を指しても用いられます。

海外との違い

 欧米では、上司が明確な指示を出し、部下はそれに従うというスタイルが一般的です。そして、「言われていないことはやらない」が基本になっています。一方、日本では「言われなくても察する」ことが求められ、忖度が自然と生まれました。

良い忖度と悪い忖度

 もともとの忖度は、相手の心中を推し量ること、他人の気持ちをくみ取ることでした。そのため、言葉自体は中立的で、良い・悪いの意味は含まれていませんでした。しかし、近年では、相手の意向を過度に推測し、自分の意見を押し殺してまで迎合するようなネガティブな文脈で使われることが増えています。そのため、良い忖度悪い忖度の区別が必要となりました。これは、忖度をした結果の行動によって分けて考えることができます。そして、忖度は使い方次第で「潤滑油」にも「毒」にもなります。

良い忖度(ポジティブな側面)

 「良い忖度」は、相手への配慮や気遣いとして働き、建設的な結果をもたらすものです。これは、円滑なコミュニケーションや人間関係を築く上で重要な能力と言えます。

  • コミュニケーションの円滑化: 相手の状況や気持ちを察し、先回りして行動します。これにより、人間関係や組織内の連携がスムーズになります。
    • 例: 上司や同僚の多忙を察して、指示される前に必要な資料を準備しておきます。
  • 気配り・思いやり: 相手の立場や心情を深く理解しようします。そして、この姿勢は、顧客対応やサービス提供の質を高めます。
    • 例: 訪問先の都合を推測し、商談時間を少し短めに切り上げることを提案します。
  • 組織の活力を維持: 適切なレベルでの配慮をします。これは、チーム内の不要な衝突や摩擦を防ぐ助けになります。

悪い忖度(ネガティブな側面)

 「悪い忖度」は、主に自分の保身や迎合を目的とし、組織や個人の健全性を損なう結果をもたらすものです。

  • 過度な迎合と保身: 権力を持つ人や目上の人の機嫌をとるために、自分の意思や正しい判断を曲げてしまう行為です。
    • 例: 上層部の不当な要求や誤った決定に対し、反論せずに黙って従います。あるいは、積極的に手助けをします。
  • 情報の歪曲や隠蔽: 権力者の意向を推し量り、都合の悪い情報を改ざんや隠ぺいをします。
    • 例: 上司に怒られるのを恐れて、業務上の失敗や不都合なデータを報告しません。もしくは、改ざんをします。
  • 組織の停滞: 誰もが上司の顔色をうかがうようになります。そして、自由に意見を言い合えない「ものを言えない空気」が蔓延します。これにより、組織全体の健全な議論やイノベーションが阻害されます。
  • ストレス:上司への過剰な気遣いによるストレスが生じます。
  • 責任の所在:責任の所在が不明確になります。

まとめ

 ここまで忖度について本来の意味や歴史的背景、日本文化との関係について説明しました。そして、もともとの忖度は、相手の心中を推し量ること、他人の気持ちをくみ取ることでした。しかし、現在には、良い忖度と悪い忖度があります。

 忖度は日本の文化に根差した行動様式ですが、現代の多様化した社会では、「察する力」と「伝える力」のバランスが重要であると考えられます。また、相手の気持ちを思いやることは大切ですが、時には「はっきり言う」ことも必要です。忖度に頼りすぎず、オープンなコミュニケーションが必要だと考えられます。 

 

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