試験で良い点を取ったのは自分の努力のおかげである。しかし、悪い点を取ったのは先生の出題が悪いせいにする。このようなことを考えたことがあるような気がします。そして、人は誰しも、自分の評価を高め、傷つけないように心を守る傾向があります。これを心理学では 「自己奉仕バイアス」 と呼びます。
このブログでは、この自己奉仕バイアス(Self-serving bias)がどのようなものか、なぜ起きるのか、具体例、メリット、デメリット、活かす方法、避ける方法について調べました。以下にこれらの内容について説明します。
自己奉仕バイアスとは
自己奉仕バイアスは、成功したときにはその原因を自分の能力や努力などの内的要因に帰属させます。そして、失敗したときにはその原因を運や環境などの外的要因に帰属させやすいです。このような、自分に都合の良い認知の偏りのことが自己奉仕バイアスです。そして、これは自己の自尊心を維持・高揚させたり、他者に対して自分を良く見せようとしたりする動機から生じます。人間が持つ普遍的な傾向の一つでもあります。
- 成功したとき → 自分の能力や努力のおかげと考える
内的帰属で自分の能力、努力、才能、人柄などとして受け取ります。そして、自己高揚として自尊心を高めます。 - 失敗したとき → 外部要因(他人・環境・運)に責任を押し付ける
外的帰属で運の悪さ、不公平な状況、他者のミス、環境など影響として受け取ります。そして、自己防衛として自尊心の傷つきを防ぎます。
主な発生要因
- 動機づけ要因(動機的帰属):
- 自己高揚 (Self-Enhancement): 成功体験を自分の力によるものと捉えます。そして、自信を深め、幸福感を高めようとする動機です。
- 自己呈示 (Self-Presentation): 他人から有能でポジティブな人物だと見られるようにします。そして、成功は自分のおかげ、失敗は外的要因のせいだと公的に主張する動機です。
- 認知的要因(期待に基づく帰属):
- 人は一般的に、自分が成功することを期待しています。
- 成功という期待通りの結果が出たとします。その場合、人はその原因を自分自身(内的要因)に求める傾向があります。(これは予測と一致しているため、合理的だと感じます。)
- 失敗という期待に反する結果が出たとします。その場合、人はその原因を予測不能な外部の状況(外的要因)に求める傾向があります。
具体例
自己奉仕バイアスは、日常生活やビジネスなど、さまざまな場面で見られます。
- テスト:
・「徹夜で勉強した努力が報われた」「やっぱり自分は頭がいい」
⇒「先生の教え方が悪かった」「問題の出し方がひどい」「体調が悪かった」
・高得点「自分の勉強方法が良かった」
⇒ 低得点「問題が難しすぎた」 - スポーツ :
・「俺のテクニックと戦略が冴えていた」「練習の成果が出た」
⇒「審判の判定が不公平だった」「グラウンド(天候)が悪かった」「チームメイトの動きが悪かった」
・勝つ「自分の実力が出せた」
⇒ 負ける「運が悪い」「審判が不公平だった」 - 仕事/営業:
・「自分の企画力と交渉術が優れていた」「粘り強さで勝ち取った」
⇒ 「上司のサポートがなかった」「市場のタイミングが悪かった」「競合が卑劣な手段を使った」
・プロジェクト成功「自分のリーダーシップのおかげ」
⇒ 失敗「上司の指示が悪かった」 - 自動車事故:
・事故を回避したとき:「自分の運転技術が高いからだ」
⇒ 事故に遭ったとき:「相手の不注意だ」「車に欠陥があった」
メリットとデメリット
メリット
- 自尊心の保護と維持: 失敗しても自分の責任ではないと考えます。これは、自己肯定感を保ち、精神的な安定につながります。
- モチベーションの向上: 成功を自分の能力の証と捉えます。そして、自信が深まり、次の行動への意欲(モチベーション)が高まります。
- 失敗から立ち直りやすいです。
デメリット
- 学習と成長の妨げ: 失敗の原因を常に外部に求めると、自己反省や改善を行う機会を逃します。そして、同じ過ちを繰り返す原因となります。
- 人間関係の悪化: 自分の非を認めず他者や環境に責任転嫁する姿勢は、周囲の信頼を失います。そして、軋轢を生む原因となります。特に、組織やチーム内での公平な評価を妨げます。
- 失敗から学びにくいです。
- 責任転嫁による人間関係の悪化を招きます。
- 過信や慢心につながります。
活かす方法
- モチベーションを高める
成功を「自分の努力の結果」と考えます。すると、自信とやる気が続きやすくなります。 - 失敗からの立ち直りに使う
「今回は運が悪かっただけ」と前向きに考えます。そして、落ち込みすぎず再挑戦できます。 - ポジティブ思考の習慣にする
適度な自己奉仕バイアスは、ストレスを和らげます。そして、挑戦を続ける力になります。
避ける方法
- 事実ベースで振り返る
「自分に改善点はなかったか?」と客観的に書き出します。 - 他者の視点を取り入れる
同僚や友人に「どう見えたか?」を聞くと、自分に都合のよい解釈を修正できます。 - 失敗から学ぶ習慣をつける
「環境が悪かった」と思っても、その中で自分にできた工夫は何かを探します。
まとめ
ここまで自己奉仕バイアスがどのようなものか、なぜ起きるのか、具体例、メリット、デメリット、活かす方法、避ける方法について説明しました。そして、自己奉仕バイアスは、心を守り、やる気を支える自然な心理作用でした。しかし、行きすぎると、責任転嫁や成長の停滞を招くこともあります。
また、克服のために物事を客観的に捉え、成功も失敗も様々な要因が絡み合いとして多角的に考える姿勢が重要です。そして、「成功は自分のおかげ」と自信につなげます。加えて、失敗も自分の学びに変えます。そうすることで、自己奉仕バイアスをうまく活用し、成長に役立てることができると考えられます。


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