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線状降水帯とは?

科学
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 何故か、ここ最近になって天気予報などで耳にするようになってきた線状降水帯についてどういうものかについて調べてみました。これまで、集中豪雨、局地的大雨、ゲリラ豪雨などが使われてきていました。

気象庁の定義は

 気象庁では、「顕著な大雨に関する気象情報の発表基準」という名前で線状降水帯の条件を記述していました。

 現在、10分先、20分先、30分先のいずれかにおいて、以下の基準をすべて満たす場合に発表。

  1.  前3時間積算降水量(5kmメッシュ)が100mm以上の分布域の面積が500km2以上
  2.  1.の形状が線状(長軸・短軸比2.5以上)
  3.  1.の領域内の前3時間積算降水量最大値が150mm以上
  4.  1.の領域内の土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)で以下の条件に該当時
  • 土砂災害警戒情報の基準を超過(かつ大雨特別警報の土壌雨量指数基準値への到達割合8割以上)
  • 又は、洪水キキクル(洪水警報の危険度分布)において警報基準を大きく超過した基準を超過

※ 情報を発表してから3時間以上経過後に発表基準を満たしている場合は再発表をする。また、3時間未満であっても対象区域に変化があった場合は再発表します。

 定義は定義ですが、私には難しすぎて理解できませんでした。そのため、わかりやすい説明を探しました。

もう少しわかりやすく

 簡単には、同じ場所で激しい雨が長時間降り続く、帯状の強い雨のエリアのことです。もう少し具体的には、以下の3つの項目に当てはまることが条件です。

  • 次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって
  • 数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞する
  • 線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域

 これでなんとなく雰囲気はつかめるような気がします。雨雲の形状についてはいろいろ書かれています。ここで、重要なのが2番目の「数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞する」だと思われます。これにより災害の危険性が高まることを示しています。

集中豪雨やゲリラ豪雨との違い

 ここで、「線状降水帯」、「集中豪雨」や「局地的大雨(ゲリラ豪雨)」といった他の豪雨現象と違いについて調べました。それぞれの特徴は以下の通りです。

  • 局地的大雨(ゲリラ豪雨): 散在する降水域が20~30km四方の狭い範囲に点在する。かつ、短時間で激しい雨が降る現象を指します 。突発性が高く、予測が困難な点が特徴です。  
  • 集中豪雨: 同じような場所で数時間にわたり強く降り、100mmから数百mmの雨量をもたらす雨を指します 。線状降水帯は、この集中豪雨を引き起こす主要な形態の一つです。特に「線状」の形状と「停滞」というメカニズムによって集中豪雨が作り出されます 。  
  • 線状降水帯: 集中豪雨の一種です。特に発達した積乱雲が線状に組織化し、同じ場所で停滞する状況です。これにより、長時間・広範囲にわたる強い雨を降らせる現象です 。その特徴的な形状と持続性から、従来よりもさらに危険性が高い豪雨と認識されています。  

 これらの3つの豪雨は降る時間範囲で、「ゲリラ豪雨」と「集中豪雨、線状降水帯」の2つに分けられます。つまり、「ゲリラ豪雨」は、狭い範囲に短時間の豪雨です。これに対し、「集中豪雨、線状降水帯」は比較的広い範囲に長時間の豪雨という点です。最も危険なのが「線状降水帯」になりそうです。

発生のメカニズム

 発生のメカニズムは完全に解明されてはいません。しかし、一般的に以下の要素が組み合わさって形成されると考えられています。

  • 上空の風による組織化: 発生した積乱雲は、上空の風に流されながらも、新たな積乱雲がその風上側に発生する。そして、その形状が線状に連なるように見えます。これを「バックビルディング型」と呼びます。特に長時間にわたる強い雨をもたらす要因となります。
  • 暖かく湿った空気の持続的な流入: 線状降水帯の発生には、大量の暖かく湿った空気が継続的に供給されることが不可欠です。
  • 上昇気流の発生: 地形の影響(山にぶつかるなど)や、異なる空気の塊がぶつかる局地的な前線など発生します。その場合、暖かく湿った空気が持ち上げられ、上昇気流が発生することになります。
  • 積乱雲の連続的な発生・発達: 上昇気流によって発生した雨雲は、大気の状態が不安定な中で積乱雲へと発達します。この積乱雲が、同じ場所で次々と発生し、成長を繰り返します。

 メカニズムは、定義よりはわかりやすそうです。それぞれの条件を考え合わせることは難しい感じがします。そのため、ここは雰囲気でそんなものかと受け取ることにします。

「線状降水帯」について

言葉の使われ始め

 この「線状降水帯」という言葉が頻繁に使われはじめたのは、2014年8月の広島県の集中豪雨以来です 。この災害を契機に、その危険性と特異性が広く社会に認識されるようになりました。それ以前にも同様の現象は存在していました。しかし、この災害を契機に、その危険性と特異性が広く社会に認識されるようになりました。

発生する時期、地域は?

 発生する時期については、梅雨前線や台風の影響で発生することが多いと言われています。特に梅雨末期や秋に注意が必要と言われています。この時期に線状降水帯が発生しやすい主な要因は以下の通りです。

  • 停滞する梅雨前線の影響: 梅雨前線が日本付近に停滞します。そして、その前線に向かって南西から暖かく湿った空気が大量に吹き込むことで、多量の水蒸気が供給されます。
  • 大気の状態の不安定化: 前線の南側で水蒸気が補給される一方で、上空には寒気が流入するなど、大気が不安定になりやすい条件が重なります。
  • バックビルディング型形成の促進: これらの条件が揃うことで、下層の風が吹いてくる方向に積乱雲が次々と発生します。そして、線状に連なる「バックビルディング」が起こりやすくなります。

 また、地域的には、西日本、特に九州などの日本の南方では、暖かく湿った空気の入り込みやすい。そのため、6月から7月の梅雨期に線状降水帯が発生しやすい傾向になります。一方、東日本では、台風の時期である9月にも発生が多いとされています。 そして、特定の地域での発生傾向は、地理的・気象的特性の関係と考えられています。ただし、上記の気象条件が揃えば日本のどこででも発生する可能性があります。そのため、梅雨期以外でも発生することがあります。

その影響、被害

 線状降水帯による大雨は、河川氾濫、土砂崩れ、浸水など、様々な災害を引き起こす可能性があります。そのため、線状降水帯に関する注意情報が出た場合は、避難や警戒を徹底することが重要になる。

  • 河川の氾濫・浸水被害: 長時間にわたる広範囲の強雨は、河川の水位を急激に上昇させます。そして、堤防の決壊や越水による広範囲の浸水被害(床上・床下浸水)を引き起こします。  
  • 土砂災害: 大量の雨がふり地中に大量の水分が浸透します。これにより、斜面が不安定になり、土砂崩れ、がけ崩れ、土石流といった土砂災害が多発します。注意すべきは、雨が止んだ後でも、土砂災害が発生する危険性が残る点です 。  
  • インフラ被害: 道路や橋梁の破損、鉄道の運休、ライフライン(電気、水道、通信)の寸断など、社会インフラに甚大な被害をもたらすこともあります。そのような場合、社会機能の停止や復旧の長期化を招きます 。

まとめ

 気象庁が調べてきたように運用上の定義を定めています。細かな雨雲の形状まで定義されています。しかし、一方で、「気象学的に厳密な定義は存在しない」と明言されている点が重要であると思われます。

 勝手な味方かもしれませんが、学術的な意味よりも、防災情報として危険性を伝えるための手段と考えられます。気象庁の定義は、あくまで防災情報として線状降水帯を特定し、その危険性を伝えるための手段と捉えることができます。2014年8月の広島県での集中豪雨以来、具体的かつ直感的に危険性を伝え、国民の防災行動を促していると思います。線状降水帯の発生とともに、「明るいうちから早めの避難」や「迫りくる危険から直ちに避難」といった呼びかけを行っています。これは 、予測の不確実性を補完し、住民の主体的な防災行動を促していると感じ取れます。

 はじめは、線状降水帯の定義などを調べる目的で入りましたが、線状降水帯が災害から守るための警報で、防災のための避難等を促す意味合いが大きいことを改めて自覚しました。

 

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