天気で気分が変わるというのは聞いたことがあります。例えば、雨の日はなんだか気分が上がらない。そして、逆に晴れの日は理由もなくワクワクする。などはよく聞くような気がします。私の場合は、雨が降った時の雨の音で落ち着くということがあります。その天気で気分がわかる感覚、気のせいではないようです。つまり、気分と天気の関係には、科学的な理由が隠されているようです。
このブログでは、この天気と気分の関係の科学的根拠、天気が心に与える影響、これらを踏まえた気分転換の方法、脳との関係について説明します。
科学的根拠
幸せホルモン『セロトニン』と太陽の光
セロトニンは、気分を安定させたり、幸福感を感じたりするために欠かせない脳内物質です。そのため、セロトニンは「幸せホルモン」とも言われています。そして、太陽の光を浴びることで、セロトニンが体内で生成されやすくなります。つまり、雨や曇りの日には、日照時間が少なくなります。そして、セロトニンの生成が不足し、気分が落ち込むことになります。
気圧の変化が身体に与える影響
気圧と身体の関係では、飛行機に乗ったときに耳がキーンとなることがわかりやすい例です。あの耳がキーンとなるのは気圧の変化が原因起きています。そして、気圧が下がると、私たちの身体は無意識のうちにストレスを感じます。その結果、自律神経のバランスを崩しやすくなります。また、自律神経の乱れは、頭痛やだるさといった身体的な不調をもたらすことがあります。具体的には、天気痛と言われる低気圧が原因で頭痛やだるさを感じる人がいます。このような人は、身体の不調が、そのまま気分にも影響してしまうことがあります。
注)自律神経:自分の意思とは無関係に生命維持活動を調整する神経系のことです。主に、活動時に働く「交感神経」と休息時に働く「副交感神経」の2つがあります。そして、この2つがシーソーのようにバランスを取りながら体の機能を制御しています。
気分が季節に左右される『季節性情動障害(SAD)』とは?
SAD(seasonal affective disorder)は、うつ病のサブタイプの1つにです。ある季節にのみ、体のだるさや疲れやすさ、気分の落ち込みなどの症状が出る気分障害です。そして、冬季うつ病 、季節性うつ病とも言われています。これは、日照時間の減少がセロトニンの減少を引き起こすと考えられます。そして、睡眠ホルモンであるメラトニンの過剰分泌引き起こされると考えられます。
天気が心に与える影響
認知的要因:天気に紐づけられたイメージと記憶
私たちは、生まれてから現在に至るまで、天気と様々な出来事を結びつけています。たとえば、晴れの日は家族でピクニックに行った楽しい記憶などがあります。また、雨の日は風邪をひいて寝込んでいた辛い記憶などもあります。文化的に共有されているイメージには、晴れ晴れしい気分、雨降って地固まる等があります。過去の経験や文化的な共有イメージが、無意識のうちに私たちの気分に影響を与えます。
これは、脳が過去の経験に基づいて、天気に対して自動的に感情的な反応を準備するからです。そのため、たとえその日に何事もなかったとしても、晴れを見るとポジティブな感情が、雨を見るとネガティブな感情が湧きやすくなるのです。
注意の焦点:天気が向ける関心
私たちの気分は、何に意識を向けているかによって大きく左右されます。
- 雨の日:雨音、どんよりとした空、湿気、混雑した電車などがあります。このような不快に感じやすい要素に自然と注意が向かいやすくなります。そして、こうしたネガティブな情報に意識が集中してしまいます。すると、気分もそれに引っ張られて落ち込みやすくなります。
- 晴れの日:青空、日の光、鳥のさえずり、外の開放感などがあります。このような心地よい要素に意識が向かいやすくなります。ポジティブな情報に意識を向けることで、気分も明るく前向きになりやすくなります。
このように、天気が私たちの注意の焦点をコントロールしています。そして、これが間接的に気分を左右していると言えます。
期待と失望の心理
人間は、未来の出来事を予測し、期待する生き物です。特に週末や休日の天気予報は、多くの人にとって関心の高いトピックです。
- 「週末は晴れだから、公園にでも行こうかな」と期待を膨らませます。こんな時に、急に予報が雨に変わると、その期待が裏切られたことによる失望感が生まれます。
- 一方、今日は雨の予報だったけど、晴れた!場合、予想外の良い天気に得した気分になります。そして、それだけで気分が良くなることがあります。
このように、気分は、天候そのものでなく、天候への期待と現実とのギャップでも変動します。
気分転換の方法
科学の力を借りて気分をコントロール
- 日光浴を意識する(セロトニン対策): たとえば、晴れの日には朝に窓際でコーヒーを飲む。また、昼休憩に5分だけでも外に出てみる。このような、忙しい人でも簡単に取り入れられます。
- 部屋の明かりを工夫する(日照不足対策): たとえば、照明を明るくします。また、観葉植物を置いたりします。このようにすることで、室内の雰囲気を変えます。
- 予定を「天気」で変えない(心理的対策): たとえば、雨の日だからこそ楽しめる室内での趣味(読書、映画鑑賞など)をします。そして、「雨の日も悪くない」と思えるようなことをします。
脳と天気がもたらす気分の関係
認知的要因や注意の焦点などは、脳の前頭前野や扁桃体といった領域と深く関係しています。これらの脳の部位は、思考、感情、記憶、そして注意を司っています。
例えば、過去の経験と感情を結びつけるのは、扁桃体の働きです。また、天候の変化が予測や期待と異なった時に生まれる失望感や喜びが生まれます。これらは、前頭前野で処理される「報酬」や「期待」といった情報と関連しています。そして、雨の日にネガティブな要素に注意が向きやすくなります。これは、前頭前野が注意をコントロールしています。
これらの心理的なプロセスが脳内で起こります。それにより、天気という外部環境の情報が、気分という内面的な状態に反映されます。
まとめ
ここまで天気と気分の関係について、科学的根拠、天気が心に与える影響、気分転換の方法、脳との関係について説明しました。まず、科学的根拠として、幸せホルモン『セロトニン』と太陽の光の関係、気圧の変化が身体に与える影響、季節性情動障害について説明しました。そして、天気が心に与える影響として、認知的要因、注意の焦点、期待と失望の心理についても説明しました。そして、その結果を踏まえて、気分転換の方法、加えて 脳と天気と気分の関係についても説明しました。
天気と気分の関係について科学的根拠、そして、その時の脳の状況について説明しました。このことから、天気で気分が変わる科学的根拠を説明できたと思われます。


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